コンビ結成

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 西校の校門を一歩出たところで、海が呟く。 「や、やばかった……」  俺は、ははっと鼻で笑う。 「ハマーまじやべえよな。ふたりまとめてボッコボコとか言っておいて、かすり傷ひとつ負わせられてねえでやんのっ」 「いや、そうじゃなくって……」 「うん?」  ふいと海を見上げると、彼は口元を手で覆っていた。 「惚れた」 「掘れた?」 「俺、神に惚れたかも」  神に惚れたかも神に惚れたかも神に惚れたかも。  俺、神に惚れたかも。  頭で反芻(はんすう)されたその一文の意味を理解してしまえば、顔がぽっぽと火照りいく。けれど素直には受け取れない。俺は男で海も男。だから確かめたいことがある。 「どういう意味で?」  緊張しながらそう聞いた。 「ハマーを倒した俺が一瞬カッコよく見えたから、尊敬した的なこと?それとも……」  そこまで言って、言葉に詰まる。 「つまりは、ええっと、その、だから……」  恋愛的な面で?  たったのこれが、言い出せない。 「れれれれ……」  壊れた俺に、眉を顰める海。ここで的外れなことを言ってしまえば、その眉はさらに曲がるのだろう。だから、言えないんだ。 「れれれれ、れん、れん、れんこんさん……」  くすりともしない、ツッコミもしない海を前に、『れん』が頭に付く面白い単語は他にないかと必死に模索していると、彼は俺の手を優しく取った。 「これは、恋愛感情だと思う。俺は、神が好きだ」  その瞬間に俺は卒倒。  校庭での濱口のように、意識を失いかけた。
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