三人目のお父さん

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あ、月が綺麗… そんな日だった。 母が三人目の父を連れてきたのは私が20才になったばかりの夏のこと。 一人で寛ぐにはちょうどいいバルコニー。そこで日課のようにお気に入りの小説を読んでいた時、母は突然彼を連れて来た。 「亜香里〜ただいま。お父さん連れてきたわよ」 それはごく自然のやり取りだった。 まるで友達か親戚を連れて来た感覚で紹介されたその人は知らない人。初めて会う人だった。 けど、驚いたのはそこじゃない。 「こんにちは、初めまして」 月明かりに照らされて見えた顔。 それはお世辞にも愛想がいいとは言えなかったけれど、この時私はハッと目を奪われる。 ハーフ、かな? 鼻筋は高くキリリとした意思の強そうな瞳。 にこりとも笑わなかったけれど、爽やかな顔立ちに落ち着いた口調は好印象をもたらした。 日本人離れしているその顔はまるで雑誌のページから抜け出たような眩いばかりの容姿だった。
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