三人目のお父さん

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「上条優斗です。よろしく」 名前からしてどうやらハーフではないらしい。 そのままスマートに手を出され戸惑った。 普通はこんなことしない。今まで応えようともしなかったのに。 この時、私は吸い寄せられるように彼の握手に応えていた。 そっと触れるだけ。 それなのに彼はそんな私を見て一瞬だけ微笑んだ。 (あ……) その瞬間雷に撃たれたように強い衝撃を受けた。 心の内側がビリビリと痺れたような感覚になったのだ。 「今日から貴方のお父さんよ。夕方ね、婚姻届け出してきちゃった」 やっぱり母はちょっとそこの郵便ポストに郵便物を出してきたような感覚でケロリと言った。 母の天真爛漫。悪く言えば能天気さはもう嫌と言うほど見飽きてる。 (きっとこの人も……) 長くは続かない。 そんな予感をしながらも私はこの時思いとは真逆。チグハグな態度をとっていた。 「月島亜香里です」 たった一言そう告げた。 受け入れたわけじゃない。でも口が勝手に動いていた。 私には珍しいほどの"好奇"という印象を交えた挨拶だった。 一目惚れなんて信じない。 頭の中でそう呟いているのに目の前の彼から目が離せない。
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