三人目のお父さん

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そんな私を見て母はこの時どんなことを考えていたんだろう。 「亜香里、今日から優斗も一緒に住むからよろしくね。私がいない間もちゃんと仲良くしてあげるのよ?」 どの口がそう言ってんだ。 そう思ったけど、この人に何か反論したところで真面目に返してもらえない。 話し合ったところで無駄なのだ。 「………」 私は愛想のないまま「もう寝ます」と二人の横を通りすぎ、さっさと自分の部屋に戻った。 ベッドに座るとどっと肩の力が抜けた。 ちゃんと息が吸えてなかったことにこの時自分でも驚いた。 「ま、今回いつまで続くか見物よね」 年だって見るからに離れてる。 そして彼女の男遍歴は今に始まったことじゃない。 母は気紛れだ。 父が亡くなって20年。 女優という職業を売り物して、男性を虜にするのが非常に上手い。 今まで幾度となくこのようなシチュエーションはあった。 結婚相手を連れてきたのはこれで三回目。 恋人関係を含めればもはや紹介された数は両手では収まりきらないほどの人数だ。 まるで酔った勢いで猫や犬を拾ってきたかのような母の行動に何度も嘲笑いたくなり、何も感じることはなくなった。
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