三人目のお父さん

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そしてこの人も例外じゃないんだと思う。 私の母と結婚した時点で普通とはかけ離れた性格をしてるのかもしれない。 「貴方って変わってるよね?」 そんなある日のこと。 思わず皮肉っぽい言葉をかけてしまったけれど、優斗は特に気にした素振りもなく掃除の手を動かしていた。 こんな環境にも関わらず、彼は母の代わりに家のことを熱心にしてくれる。 (もしかして財産目当て?) それとも母からお金でも大量に援助してもらってるのだろうか? そうでもなきゃ、こんな若くて容姿の優れた人がここまで自由身勝手な母に尽くすはずがない。 例え好きという気持ちがあったとしても上手く出来すぎてる気がしてどうしても腑に落ちない。 「本当に母のことが好きなんですか?」 「もちろん、俺は悠里さんと約束したからね」 何を?と思い、おもいっきり疑心暗鬼の目を向ける。 優斗は一瞬だけ手を止めた。 「この家を守るって。あと君のこともね」 「別に貴方に守ってもらうつもりはありませんけど。父親だって認めたつもりもありません」 「………」 優斗は少しの間無言になったけど、すぐに気にも止めない様子で掃除機をかけ始めた。 そして目線は合わせないまま、そっけなくぽつりと呟く。 「安心して?俺も無理して父親になろうとは思ってないよ。君の意見ももっともだと思うから」 何なのそれ。 思わずカチンと噛みついた。 「じゃあ出てってくれます?」 「悪いけどそれは出来ないよ」 「私は邪魔です」 「大丈夫、そのうち慣れるよ。俺のことは空気だと思っててくれればいいから」
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