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2 はじまりは雪の中
生物教師である金澤先生と、私が、関係を持つようになったのは、高二だった冬、つまりは昨年の修学旅行がきっかけだった。
修学旅行の行き先は、毎年代わり映えのない、会津若松でのスキー合宿。私はこれが死ぬほど嫌だった。
スキーの経験は、ある。それは小学生の時、子ども会の「みんなでスキーを楽しむ会」でのことである。いわゆる地域の子どもたちによる日帰りのスキー旅行である。ここでの経験が、まずかった。ただでさえ運動神経の悪い子どもだった私は、どんどん上達していく友人たちの横で、ボーゲンすらままならぬまま、雪と格闘し、仕舞いには転げて雪まみれになった姿を皆に大爆笑された。それ以来、スキーは私にとってトラウマなのである。
このたびの旅行でも、私は初心者の組に入れられ、悪戦苦闘する羽目になった。ひとり、またひとりと、クラスメートは上のクラスに上がっていったが、私と言えば、全く悪夢の再来としかいいようが無い状況で、しまいには初心者クラスは私ひとりになっていた。そして、そのクラスの担当が、先生だったのだ。先生は、文字通り、手取り足取り、私にスキーの基本を教えようと頑張ってくれた。だが、私はどうにもそれに応えようがなく、合宿の時は流れていった。
旅行最終日、いまだに板を履いて立つことさえおぼつかない私に、先生は言った。
「松永、最後だし、リフトで上まで行かないか。先生がサポートするからさ」
そう言われて、私はおっかなびっくり、二人乗りのリフトの椅子に滑り込む。そして、先生は隣に座った。
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