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1 新宿東口アルタ前
四月が始まって二日目。晴れた日。
私は新宿東口駅前アルタ下で人を待っていた。ビルの上にある大きなモニターでは、どこかのチャンネルのバラエティ番組の宣伝が、大音量で繰り返し流れていて、TVが苦手な私には少々、いや、大層鬱陶しい。私はそれから気を逸らすかのように、流れる人波を見つめる。
「新宿アルタの前で待ち合わせなんて、いかにも昭和生まれの人っぽい発想だよなあ……」
私は独りごちる。新宿で会おう、といわれたとき、私は最初、待ち合わせ場所に駅近のスタバを指定したのだ。すると、こう言われた。
「そんな洒落た場所、俺にはそぐわないよ。もう少しわかりやすくて、行きやすい場所にしてくれ」
「でも……私、新宿、そんなに詳しくないし……」
「じゃあ……」
そう、その「じゃあ……」の後告げられた指定場所が、いま、私の立っているここだ。
「そこしか分からないんだ。俺の世代だと、新宿の待ち合わせ場所っていえば、そこだから」
そう言われて、私はその「世代」という言葉に、自分と相手の歳の差を、今更のように感じた。本当に、今更なのだけれど。
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