コーヒー色のストーカー

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「助かった」とホームに降りた瞬間、後ろを見た。あの男も降りて来た。  楓の足が止まってしまった。何か武器になるものは……ハンドバッグを開ける。茶色の小袋があった。そうだ、昨日先輩の美智子にもらったブルーマウンテンだ。酔って帰宅したので、そのまま入っていた。これしかない。  楓は小袋の封を開け、笑顔で近づいて来るストーカーに投げつけた。  小袋は見事男の顔面に命中し、ショックで 男は足から崩れ、ホームに座り込んだ。コーヒーの粉が舞い上がり、男の全身に降り積もった。辺りにコーヒーの香りがあふれた。  駅員を目にした楓は叫んだ。 「この人、ストーカーです。助けてください」  駅員と乗客たちが男を取り押さえた。  コーヒーの粉まみれの男は叫んだ。 「違います、違います。僕は、この方が木場駅の改札で落としたパスケースを渡したいんです」 (了)
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