3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「助かった」とホームに降りた瞬間、後ろを見た。あの男も降りて来た。
楓の足が止まってしまった。何か武器になるものは……ハンドバッグを開ける。茶色の小袋があった。そうだ、昨日先輩の美智子にもらったブルーマウンテンだ。酔って帰宅したので、そのまま入っていた。これしかない。
楓は小袋の封を開け、笑顔で近づいて来るストーカーに投げつけた。
小袋は見事男の顔面に命中し、ショックで
男は足から崩れ、ホームに座り込んだ。コーヒーの粉が舞い上がり、男の全身に降り積もった。辺りにコーヒーの香りがあふれた。
駅員を目にした楓は叫んだ。
「この人、ストーカーです。助けてください」
駅員と乗客たちが男を取り押さえた。
コーヒーの粉まみれの男は叫んだ。
「違います、違います。僕は、この方が木場駅の改札で落としたパスケースを渡したいんです」
(了)
最初のコメントを投稿しよう!