温もり

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僕が小学5年生になった時、コタローが動かなくなった。だけど友達と外で遊ぶのが楽しくてコタローと過ごすのは夜だけになっていたこの頃の僕は、いつも後ろを付いて来ていたのが無くなることに寂しさは感じたが、戻ってくる事も分かっていたので悲しくはなかった。母に修理に出してもらうとバッテリーが古くなっているだけだと言われた。 「大切にしてあげているんだね。状態としてはとても良いですよ。」 そう言われ戻って来たコタローは最初に家に来た時と変わらず、また「にゃあ」と鳴き尻尾を振っていた。 それからまたコタローと過ごす時間が少しだけ増えた。なんだかコタローが寂しそうにしている気がしたのだ。でもやっぱりこの頃の僕には友達と遊ぶほうが何倍も楽しく、コタローから離れていくのに時間はかからなかった。それでもコタローは毎日僕の帰りを迎え、後ろを付いて歩き、同じベッドで眠った。 中学生になると部活動が始まりコタローと過ごすことはどんどん減っていった。だがコタローは動きづらそうな足でゆっくりと俺の後を追い、パサパサの毛並みで擦り寄ってきた。その頃はまだ、なんとなくコタローを膝の上に乗せテレビを観たりすることもあった。 それから数年が経ち、俺が高校生になった頃にはコタローは毎日リビングに居た。俺が構わなくなってしまったコタローを母が窓際に置いていた。ずっと気持ちよさそうに眠っているようだった。最初はたまに撫でてやったりもしたが、次第にコタローは部屋の一部に溶け込み、いつの間にか目をやる事も無くなっていた。だからいつの間にかコタローが居なくなっていたことにも気がつかなかった。
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