温もり

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僕の生まれた時代では犬や猫は動物園に居た。動物園にしか居なかったと言う方が正しいだろうか。数十年前まではペットとして飼われていたらしい。だが悪徳ブリーダーが増えたことで犬や猫が溢れ、殺処分される数も捨てられる数も年々増えていたという。それにより野良犬から狂犬病が流行ってしまったり、動物愛護団体の暴動が起きたりもした。そして政府は家庭で犬や猫を飼うことを法律で禁じ、野生で生きるものには徹底的に去勢手術を行った。 その結果、本物の犬や猫は人間と共存することが無くなってしまったのだった。 「誕生日おめでとう。」 僕が5歳になった日にコタローはやってきた。銀色に黒縞模様のアメリカンショートヘアという猫。 それまで猫をあまり見た事がなかったので僕はどう接すれば良いのか分からなかったが、頭をひと撫ですると「にゃあ」と可愛らしい声が鳴り細い尻尾が揺れた。 「今日から宜しく、コタロー。」 その小さな少し硬い体を抱き上げると、コタローはまたしても「にゃあ」と鳴き尻尾を揺らした。それが5歳の僕にはとても愛おしく思えた。それからというもの僕とコタローは毎日一緒だった。朝は起きると一番にコタローの毛並みをブラシで整え、両親の帰りを待つ間はおもちゃで遊び、夜は同じベッドで眠った。コタローは幼い僕にとって弟のような友達のような存在だった。
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