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第一章 暴力団
それから数日後のある夜、出かけていたヴァノが帰ってくるなり、直登の部屋に顔を出した。
「どうしたの?」
先日ヴァノが買ってきた、扇風機の前に座っている直登が声をかけた。
エアコンにしようか迷ったが、設置が面倒だったので止めた。
「次の仕事が決まったぞ」
「誰を殺すの?」
直登が尋ねた。
「ここから近い、暴力団を潰す。宝玉を取り出すのは」
「リーダー、でしょ?」
直登がヴァノの言葉を遮った。
ヴァノは溜息を吐きながら、うなずいた。
「出向くのは明日の夜。出かけるときになったら、声をかける」
直登はひとつうなずいた。
ヴァノはそれを確認し、二階へと向かった。
ヴァノは左手に嵌めていた手袋を外し、冷蔵庫から一本の缶ビールを取り出した。
それをテーブルに置き、右腰に帯びていた刀身以外が黒の日本刀を鞘ごと抜いて、テーブルに立てかけた。
着ていた外套とジャケットを脱ぎ、椅子の背もたれに引っかける。
椅子に座りながら、右手に嵌めていた手袋を外す。
テーブルの上にポケットに入れていた、スマートフォンを置いた。
ワイシャツのボタンをすべて外し、ヴァノは息を吐く。
ちなみに着ているものはすべて黒だ。
ヴァノは視線を少し彷徨わせた後、缶を手にしてプルトップを開けた。
小気味よい音を聞きながら、ビールを飲んだ。
酒はめちゃくちゃ強い。
半分ほど飲み干して、いったん唇を離す。
「ふう」
息が漏れた。
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