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翌日、ヴァノはスマートフォンに表示される時間を見て、夜になったことを確認するや、なにやら準備を始めた。
ネックレスをワイシャツの中に隠し、ボタンをすべて留めた。クローゼットの前までいき、扉を開けた。
中には十着ほどのジャケットとワイシャツ、フードつきの外套が入っていた。
ジャケットを着たヴァノは、外套を手にして右腕に引っかけた。
抽斗の中から手袋を取り出した。
それをスラックスのポケットに突っ込んで、クローゼットの床にある隠し棚のスイッチを押す。
かちりと音がして、戸の下を持って上に引き上げる。
中に入っていたのは、一振りの日本刀と、黒の取っ手つきの四角い鞄。
それらを取り出し、隠し棚を閉めて、クローゼットから離れる。
ひとまずテーブルに鞄と外套を置いて、刀を右腰に帯びる。
外套を羽織り、スラックスのポケットに突っ込んだ手袋を取り出して、嵌める。
黒ずくめの恰好をしたヴァノは、黒の取っ手つきの鞄に手を伸ばし、中身を取り出す。
中に入っていたのは、表紙に文字が書かれた、古く、分厚い焦げ茶色の本だった。なんと書かれているかは不明だが。
ヴァノは、本をペラペラとめくった。
本の中には、数多くのさまざまな色をした宝玉が、収められていた。
これは、ヴァノの魔導書だ。
至高の宝玉には劣るが、質の悪い宝玉でも、少なからず、エネルギーは宿っている。
ヴァノは、人間達からより多くの宝玉を集めるために動いている。
つまり、より多くの人間を殺している。
生かしておく方が惨いことになると、分かっているからだ。
直登は例外だ。偽りの感情で誤魔化せている部分もあるだろうが、負の感情はまだ残っている。
いつになるかは分からないが、直登の感情すべてを宝玉にしなければと思うヴァノだった。
魔導書を閉じて、鞄に仕舞うと、一階へ下りた。
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