お願いだから邪魔しないでくれ

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お願いだから邪魔しないでくれ

美智子(みちこ)ちゃん」 「なあに? 」 一浩(かずひろ)は手に汗をかきながら正座をし、卓上テーブルの向かい側に座っている美智子に向き直った。 尻のポケットから婚約指輪のケースをおもむろに取り出して彼女から見えないようにテーブルの下に隠しておく。 「今まで俺、沢山の苦労させてきちゃったけど……」 「うん」 美智子はとても素直な()である。 五つ上である一浩の一言一句真剣な瞳をさせて聞き入っていた。 「散々泣かせてきちゃったけど」 「うん」 「僕とけっ」 「にぃやぁおぅおぅおぅぅぅー! 」 「なぁおなぁおなぁおぅぅうぅー! 」 一浩は固まった。 「……ごめん、ちょっと待ってて」 「うん」 一浩は音の出所をすぐに察知して東側の窓に向かうと勢いよくそこを開けた。 ガラガラガラッ。 その音が鳴った途端に、ノイズはぴたりと止んだ。 窓の下を見たが、奴らはもう姿を消している。 窓を閉めて気を取り直し、またテーブルの前に座り直すと咳払いをひとつして話し始めた。 「美智子ちゃん。今までずっと待たせてごめん。俺とけっ」 「なあぁーおぉーおーうーおぅおぅおぅおぅ」 「いやぁーおぅおうおうおうおー」 「なぁおっ、なぁおっ、なぁおっ、なぁおなあーおぉうぅー」 「にいーやあぁぁー」 「……」 「ぃなっふっ(enough)」 一浩は暫く俯いていたが不意に顔を上げた。 「ファミレス、行く? 」 『了』
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