②:観察

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②:観察

それから数日間、朝おじさんとは挨拶だけを交わす日が続いた。そうしていると、今までずっと背景のようにしか思っていなかったおじさんのことが目に付くようになって、私は時々遠目からおじさんのことを観察するようになった。 おじさんは、時々保健室の前を通っていった。ほとんどの場合台車で何かを引いていて、段ボール箱を積んで職員室に向かっていることが多かった。段ボール箱には「コピー用紙」と書かれていて、職員室のコピー機で使う紙を補充していることが分かった。 最もよく見かけたのは、校舎の外で箒を掃いたり植木の剪定をしたりしている姿だ。運動場の端や通路わきの花壇、中庭や、校舎裏に道具を持って入っていくのを見たこともあった。 私は、自分を裏切った人達に出くわすのが嫌だったから、保健室から一日全くでないこともあった。けれど最近は、勉強の合間を縫って時々校舎の外に出ては、どこかにいるおじさんの姿を探すのが日課になっていた。 そして、いつどのタイミングで見かけてもおじさんは一人だった。
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