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すぐ横から掛けられたその声に顔は向けない。向けなくても誰かは分かるし、相手がどんな表情をしているかも知っているから。
無言でいると、もう一歩こちらに近づいてくる足音が聞こえて、私は立ち上がった。
「茜、待って」
「待たない」
「私、話が」
「話すことなんてない」
また一歩、こちらに近づく音が聞こえた。私は踵を返し、校舎へと駆け込む。彼女が近づくのなら、その分私は離れる、ただそれだけのことだ。体は実にスムーズに動いてくれた。
「あかねっ、ごめ……!」
背後から追いすがるような声を、無視して走る。
彼女の謝罪に、意味などない。謝ったところで、彼女のしたことが無くなる訳でもないし、私の心が元に戻る訳でもないのだから。
それから、私は休み時間に外に出ることをやめた。
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