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プロローグ:出会い
次々と落ちゆく葉は、まるで心の中に降り積もるようだ。
体が重い。
足元を見ながらただ歩く。散らばっている落ち葉と自分の足と、落ち葉を踏みしめる音以外何もない世界を行く私は、限りなく一人きりだった。
「おはようございます」
その声が聞こえてくるまでは。
驚きと、一人きりの世界を侵害されたイラつきとで眉を顰めながら顔を上げる。校門から校舎へと行く並木道の端、山と積まれた落ち葉と、力なく薄ら笑いを浮かべる作業着のおじさんが視界に映った。
見たことがあるような、ないような。これまでの学校生活を思い返しても、背景の一角にその作業着の灰色が映っていたような気がするぐらいで、それを面識があるとは言わないだろう。
例えるなら、そう、電信柱だ。毎日通る道にあるそれが、ある日急に話しかけてきた位の、得体のしれない恐怖心に私は突き動かされてしまった。
「……」
だから、会釈することもせずに早足で、保健室の裏口へと駆け抜けて行ってしまったのだ。
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