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🍀
女の子は困ったように笑いました。
「元気でね」
そう小さな声で言って、僕たち兄弟をおいていってしまいます。
「ねぇ、どうして行っちゃうの」
一生懸命呼びかけても、女の子はふり向いてくれません。
「やめときな」
一匹の兄弟が言いました。
「捨てられたのよ。私たち」
別の兄弟が冷たい声でつけ足します。
「どうして?」
きくと、兄弟はあきれたようにタオルの上にこてんと転がりました。
「そういうもんなのさ。あの人間たちの力だけでは僕たち六匹はとても育てられない」
「よく分らないけど、私たちにごはんを食べさせるためには『おかね』ってものがいるみたいよ?」
末っ子の子猫が言いました。
「それにしたってひどいと思わないか?」
「ここにあるカリカリとミルクがなくなったら、どうすればいいの?」
「食べなかったら死んじゃうってお母さんが言ってた」
他の兄弟たちも口々にさけびます。
「しー、しずかに」
さいしょに僕に声をかけた一番上の子猫が、声をひそめます。
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