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だから、今は絶対謝らない。
「こんな企画書じゃダメなんだよキミ!
猫の子も一匹もいないような、閑散とした観光スポットは困るんだよ!」
部長の眉間には、ますますシワが寄っている。
頭に来ないわけではない。
そして、謝ってしまえば、ある意味楽だ。
でも謝らない。
「もっと企画を練り上げて!」
それに関する私の心の声は、
『やってますやん!』
「安全に観光客を増やす方法を!」
『政府が緊急事態宣言だしてますやん!』
「今週中にどうにかして!」
『だ~か~ら~!
緊急事態宣言出てるっつーの!
てかバカなの?』
だ。
だけどそこは大人として対応した。
いわゆる傾聴の技術と言うやつだ。
なので、私がその際に言葉にしたのは、
「そうですよね。」
「困りましたね。」
「誰が悪いわけでもないのですけどね~。」
「部長の苦労、心よりお察しします。」
等々だ。
それから解放されたのは、三十分後の事だった。
私は思うのだ。
きょうび、パソコンにつないだマウスを使うのも時間の無駄と言われているのに、この三十分超えのどうしようもないただの愚痴を聞かされるこの時間は、一体何の意味があるのだろうかと。
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