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貸出票の二人はこの廃校の卒業生だった。
図書といっても昔は村で本を貸し借りできる所はここしかなかったので、卒業後もしばしば通っているうちに好意を寄せあう仲になった。そして相手を思う気持ちや近況を詩集に挟み込んでは愛情を育んだ。想いが通じた二人はめでたく結婚できたが、しばらくして男性は戦争に征って帰らぬ人となった。妊娠していた女性は子どもを生み、女手一つで育てていたが、子どもが独立する前に体を壊して世を去った。幸い残された子どもは結婚して孫が独立した今でも元気でいる。二人に関するこの話は、その子から直接聞き取ったものだ。物忘れが酷くはなっていたが、自分の両親のことは忘れることがないと涙を流した私の祖母。
図書室の少女は曾祖母だった。
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