音戸さんの猫カフェ

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 何事も思い立ったが吉日、というのが私のモットーだ。  今日は仕事のシフトに入っていないということで、昨日の夜、明日はどうやって過ごそうか、どこへ行こうかと考えた。  そして、そういえば仕事しているのに、プライベートで動物に触れたことが、あまり無いなと思った。強いて言うならば、小学生の頃に訪れた動物園くらいか。  そこで、よし、猫カフェに行ってみようと思った。  今、(ちまた)で話題の、猫と触れ合える場所。丁度、(うち)の最寄り駅の近くに、猫カフェがオープンしたらしいと母から聞いたのだ。  そこへ訪れたという彼女の友人曰く、なんでもそこには、少し変わった猫がいるのだとか。  どんな猫なんだろう?と思って歩いていると、どうやら着いたようだ。  外観はこじんまりとしているが、お洒落なミントグリーンの煙突付き屋根に、茶色のレンガ調の建物という、なんとも変わった組み合わせだ。  今どきの"映え"を狙ったのか、それともレトロモダンな"映え"を狙ったのか。 「……変なの」  小さく呟きながら見上げた木目の看板には、"猫カフェ・音戸"という丸字が踊っていた。 ――"おとど"さん……。個人経営かな?  まぁ、この見た目からしてそれっぽいなと思いながら、そっとドアノブを引き、恐る恐る店内に足を踏み入れる。
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