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カランカランという小気味良い音と共に、「いらっしゃいませー」と低めだが心地良い声がかかった。同時に、冷房の風が半袖の肌をさらりと掠める。
店内にはテーブル席が4つと、まるでバーカウンターのような美しい飴色のそれがあった。
平日の昼下がりだからか、他にお客さんの姿はない。
ちょっと迷ったが、やはり私1人なのでカウンター席(しかし1番端っこ)に腰掛ける。
「ご注文がお決まりになりましたら、お声掛けくださいませ」
それじゃあ、抹茶フラペチーノを――そう、通い慣れたチェーンカフェと同じ注文をしようと顔を上げて――固まった。
そして、まじまじとその顔を見つめて叫んだ。
「ね……猫が喋ってる!というか、2本足で立ってる!」
そこには、まるでホテルマンのようにピシッと姿勢を正し、手を――じゃなくて前足をお腹の上に重ねた白猫の姿があった。
ちなみに服もちゃんと着ている。白のワイシャツに、ミントグリーンのエプロン。
「え……?……どうなってんの?」
思わずそう零すと、よくぞ聞いてくださいました、というように、彼(たぶん雄)はぐっと胸を――じゃなくてスリムなお腹を反らし、答えた。
「私、当店の店主を務めさせていただいております、"ねこ"と申します」
――……はい?え?まさかのまんま?
「いや、絶対そんな名前じゃないでしょ!吾輩はナンタラ……じゃあるまいし」
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