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「あの……1時間おいくらですか……?」
もう一度カウンターへと向き直り、財布のお札を確認し始めた私に、音戸さんはふふふ……と爽やかな落ち着いた微笑(※猫)を零しながら、さらりと告げた。
「お飲み物代のみで結構ですよ」
「えっ!いやそんなわけない……っ――あ、抹茶フラペチーノください」
「抹茶フラペチーノですね。かしこまりました」
動揺する私を他所に、カチャカチャとグラスやらストローやらを手際よく用意していく音戸さん。
「――って、そうじゃなくってっ!それじゃあ、このお店、思いっ切り赤字経営じゃないですか!」
――経営管理どうなってんの?他に店員さん……は居なさそうだし、音戸さんがやってんのかな……。あ!そもそも金銭感覚、分かってないのかな?猫だから……。
脳裏でしっちゃかめっちゃか思案していると、音戸さんは早々と出来上がった抹茶フラペチーノをコースターに乗せつつ、疑問に答えてくれた。
「ここに居る猫たちはみんな、私が活動団体様から引き取った保護猫なのですよ。ですので、この子たちを養う費用は、全てその団体様からいただいております」
「あぁ……なるほど……」
――凄い……めっちゃ、ちゃんとしてる……。猫なのに……。
さっきの動揺はどこへやら、すっかりいち大人として目の前の猫さん――じゃなくて音戸さんに感心する私。
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