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私は慌てて我に返って、あわあわとたじろぐ。
「わっ!すみません、つい話し込んじゃって……。もう帰りますね」
あ、お金お金……とショルダーバッグから財布を取り出しかけた次の瞬間、両肩が勢いよく(といっても、肉球だから全く痛くないんだけど)押さえつけられた。
「その猫の特徴、他に何かありませんでしたか……?」
どこか鬼気迫る(※猫)その様子に戸惑いながらも、私はえっと……と小首を傾げて思い出す。そしてぽんと手を打った。
「あ、そういえば、右耳に、ほんのちょっと切れ目が入っていましたね。……あまり考えたくはないんですけど、これが原因で飼い主さんに捨てられたのではないか、と団体の代表が仰っていました……」
「その飼い主だった方、都内の一等地マンションにお住いではありませんか?」
はいっ!というようにピンと、腕――ではなく前足で挙手した音戸さんに、え?と目を見張りながらも、「あぁ、言われてみれば、そんな感じの雰囲気の人だったかなぁ……」と零す。
しかし流石に、そんなピンポイントな住所までは分からない。
「すみません。住んでいる場所まではちょっと……」
と続けると、「それでは――」と音戸さんは更に畳み掛ける。
その様子は、さながら探偵の聴き込みか、警察の取り調べだ。
――……前者にしとこう。
別に、疑いをかけられているわけじゃないんだから。
こほん、とひとつ咳払いをしたところで、音戸さんの次の質問が飛んだ。
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