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「その元飼い主の方は、お若いカップルではありませんか?女性の方が、すらりとしていて茶髪のロングヘアで、いつもタイトなミニスカートを穿いていて。男性の方は、いつも髪をワックスでガッチガチに固めていて、なんかもう、とにかく色々バッキバキで……」
――ん?んんん?
なんか後半にかけて説明がわやわやになってきたぞ……と思いながら音戸さんの方を見ると、その綺麗な黄金色の瞳と前歯を剥き出しにして唸っていた。そこには明らかな怒りを感じる。
私は慌ててカウンター越しに、その両肩(?)を押さえて落ち着かせようと試みた。
「だ、大丈夫ですか、音戸さん……。とにかく、一旦落ち着きましょ。確かに仰る通り、お若いカップルの方でした。派手で目立っていたので、私もよく覚えています。でも、そのことと捨てられた猫ちゃんのことが、音戸さんに、何か関係があるんですか……?」
こんなにも動揺して怒りを露にするなんて、きっと何か訳があるはず。
もしかしてその猫ちゃんは、音戸さんにとって大切な人――じゃなくて猫だったのかな。
そう思って少しだけ胸の奥がチクリとした気がしたが、その痛みは次の音戸さんの言葉によって、すぐにどこかへ追いやられた。
「おそらく……いや、間違いなくその猫は、ユキ――私の妹だと思います」
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