第4次世界大戦~またの名をキャットウォー~

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時は2031年2月。 世界は滅亡の危機に瀕していた。 空を飛び交う幾つものミサイル。 海は無数の魚雷により荒れ、大地は度重なる化学兵器の使用ですっかり恵みを失っていた。 戦により疲弊した人々は、ふと過去を振り返る。 一体、何時から世界はこんな事になってしまったのか、と。 人々の脳裏に甦るのは、全ての始まりの日のことだ。 2022年2月22日ーーあの日、全てが変わってしまった。 事の発端は、新しく就任したアメリカ大統領のインタビューでの発言だ。 「オー、ワタシ、ネコチャンダイスキデース!アメリカジンハ、ミンナ、ネコハネー!」 公共の電波で、アメリカの新大統領はこんな恐ろしい事を言ってしまったのである! この世紀のカミングアウトに全世界は戦慄した! 「バイバイデン大統領?!何て事を!」 「あいつは、奴等の……犬派の恐ろしさを知らないんだ!」 「しっ!静かに!犬派に聞かれたらどうする!」 「ああ、世界の終わりだ!」 「凶兆じゃ!空に凶兆の肉球星が見えるぞぉぉ!このままでは、世界は争いに飲み込まれてしまう!」 ……今まで、歴史上密やかに何度も水面下で行われてきた『猫派VS犬派の争い』。 実は、かの有名なワーテルローの戦いやミッドウェー海戦も、元は猫派VS犬派の戦いから始まったと言われている。 それほど、猫派と犬派の溝は深いのだ。 それなのに、よもや一国の大統領が猫派を表明してしまうとは! (きっと、何か恐ろしいことが起こるに違いない) 世界の人々は、忍び寄る争いのーー戦の足音を肌で感じていた。 その数日後、 「大変です!!バイバイデン大統領が暗殺されました!!しかも、なんと、犬党超過激派として有名な『ワンチャン大好きLOVEどっきゅん教』が暗殺の指示を行ったと発表したそうです!!」 そんなニュースが全世界を駆け巡る。 その知らせに人々は心から戦慄した。 すると、なんとその翌日、 「速報です!たった今、ワンチャン大好きLOVEどっきゅん教の教祖が暗殺されました!実行を指示したとして、超猫様高火力推しとして有名な軍事組織『猫様に毎日踏まれ隊』が犯行声明を出しております!」 またしても、この様な恐ろしい知らせが世界を騒がせた。 このニュースに、人々は思う。 「ああ……遂に、来るべき時が来てしまった……!」 「猫派と犬派は、何れ決着をつけなければいけなかったんだ!」 と。 その日から、全世界を巻き込んだ猫派VS犬派の激しい戦が始まる。 まさに、全世界を2分してしまう恐ろしい戦い。 けれど、曲げられない己の誇りの為、人間は戦った。 その血で血を洗う激しい戦いに終止符が打たれたのは、遥か後の未来ーー2222年のこと。 2月2日に、突如現れた超党派『地球よ兎に還れ党』が、あっという間に猫派と犬派を制圧してしまったのである。 そうして、世界で1番愛くるしい動物は兎様であると声明文を出したのだ。 負けた猫派と犬派の人々は、悔し涙を流しながらも、これに従う。 こうして、世界に再び平和が訪れ、この世から猫派と犬派はいなくなった。 後の世の人々は、この長きに渡る戦いのことを『第4次世界大戦』……またの名を『キャットウォー』として学習するという。 猫と犬の存在しなくなった、この世界で。
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