第1話 vsゴブリン

1/1
前へ
/3ページ
次へ

第1話 vsゴブリン

 なんでレベルアップすると、ステータスの数値が下がるんだよ⁉ 全然レベルアップしてないじゃんか‼  口に出して怒鳴りたい。けれども、ゴブリンは集まるのが早く、倒しても減る気配がない。  ――レベルアップしました。  聞こえるシステムアナウンス。もう、ステータスを見る余裕がなくなり、一心不乱に倒していく。  ――レベルアップしました。 「……にしても、レベルアップするの速くね? これじゃあ、あっという間に最弱確定だろ⁉」  俺はボヤきながら、剣を振り続ける。もう、レベルアップしたくない。そういえば、このゲームはタワーダンジョンだったはず……。  フロアが縦に重なるダンジョンのことで、上層へ行くほど敵も強くなっていく。  だんだんめんどさくなって、ゴブリンの群れを振り切り、走って逃げる。着いた先は行き止まり……。ではなく、巨大な球体だった。 「これ使えんじゃん‼ ラッキー‼」  壁との隙間から反対側へ。球体の中央に立つと、身体全体で押す。ゴロゴロと大きな音を響かせ、ゴブリンの群れへ接近。五百体近くの敵を一掃した。  ――レベルアップしました。  ――レベルアップしました。  ――レベルアップしました。 「通知うるさいなぁ~。こうなったらミュートにしとこ。後で見ればいいだけだし……」  耳にタコができるくらい、長い音声が終わるまで待つ。二十分後に音がようやく消えたので、ステータスを表示させる。  プレイヤー名:アレン  レベル:9999 ジョブ:剣士  HP:4,500  攻撃力:2,900  防御力:2,500  魔法攻撃力:2,200  魔法防御力:3,980 「完全に最弱確定だなこりゃ‼ ヤバすぎじゃん‼ このゲームぶっ壊れてる‼ あぁ~。笑いが止まんねぇ‼」  球体をビシバシ叩き、大笑いしながら転がり回る。こんなゲームはゲームじゃねぇ。けど、面白い‼  もう夢中になっていた。弱くなるのは、困るけど……。そろそろログアウトして、ベッドでゆっくり寝よう。  そう思った俺は、オプションメニューからログアウトボタンを探すが、目的の項目が見つからない。  ――『これより、本ゲームは"デスゲーム"として運営されます。いずれかのプレイヤーが全エリアを攻略後、この設定は解除されます』 「おいおい、殺し合いかよ⁉ 最弱だらけじゃ、話にもならねぇ……。ってことは、みんな狙われ確定? 高レベルほどワンパンの即死で即退場ってマジ⁈ ヤベぇじゃん‼ ログインしない方が安全なの」  ――『挑戦、お待ちしております』  アナウンスが終了。こうして始まる最弱だらけの"デスゲーム"。俺は、偶然見つけた階段から、次のフロアへ向かうことにした。  ◇◇◇◇◇◇ 「遊び始めて早々、ログアウトが出来なくなるわ、レベルアップ早すぎだわ、一瞬で最弱だわ……。おまけに〝デスゲーム〟。面白いけどあんまりだ……」  いったい、運営はどういう頭でサービスをしているのやら。俺は、第二層の賑やかな街を(めぐ)る。  道行く可愛い女性プレイヤー。がっしりとした体格の良い男性プレイヤー。小柄で幼い子供プレイヤー。様々な人達で溢れていた。 「割とプレイ人口多いんだなぁ~」  中世ヨーロッパ風の建て物が立ち並び、道がはっきりしていて歩きやすい、第二層の街。 『ただいま、三代目【アーサーラウンダー】メンバー募集中です‼』  聞こえてきた女性の声。間髪入れずに、 『あ‼ そこのお兄さんどうですか?』  勧誘の言葉も飛んできた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加