1.事実は小説より奇なり

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 そんなたわいもない会話をしていたらーーー  「「「きゃああああああ!!!!」」」  アカリから聞いていたとはいえ、この黄色い歓声はやばい。お前らののど、どうなってんの?声変わり、どこかに置いてきたんか?  チワワたちの歓声と共に、二人のイケメンが登場した。  「ーー黙れ」  まさに鶴の一声。  あっという間に沈黙に包まれる体育館。流は舞台に立つその声の主を見た。漆黒の髪に切れ長の美しい青い目。この世に存在する人間とは思えぬ美しさに、流は小説家のような感想をこぼした。  「・・・まるで、海のように深く暗い眼差しをする美しい男がそこに存在しているのでした」  「鏑木?」  「いや、今のは単なる感想」  「そうか」  美しい男が口を開けたーー。不思議と聞き入ってしまう凜々しい声だった。  「生徒会会長の源航(ミナモトワタル)だ。本日は入学式である。新入生のみんな、ようこそ。  今日はみんなは高校生として新たな一歩を踏み出す記念の日だ。ジャスティン学園の学生であることを頭に入れて、人に恥じぬ行動を取って、学生らしい生活を送って欲しい。  新入生のみんながこれからの未来を創っていく立派な人になることを期待している。おめでとう」  パチパチ・・・。  体育館が拍手喝采で満ちている。間違いなく、この人は良い人だわ。少なくとも、人をバカにするような人間じゃない。  アカリの予想が外れたな。アカリ曰く、「王道学園の生徒会会長は俺様で人を見下す」だそうだ。  しかし、この人はそんな人じゃない。  話したこともないのに、それは分かる。  アカリ・・・いや、  心から皮肉を込めて、こう呼ぶ。  お姉様。  ここはあなたが望む王道学園ではないらしいですねぇ。  
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