1.事実は小説より奇なり

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 『ジャスティン学園に通う生徒たちの恋愛対象って、やっぱり…』  『男に決まってるじゃない』  即答するアカリに流は引き立った笑顔を浮かべた。  『ですよねー。抱かれたいランキングとか抱きたいランキングとかパワーワード過ぎたんで』  『早く慣れなさい』  『そんな無茶な』  『仲良くなったみたいで俺は嬉しいよ』  大袈裟にうんうんと言う兄貴が恨めしい。  『話を戻すわよ。王道学園の生徒会は抱かれたいランキング、抱きたいランキング上位の人が選ばれた人しかいないのよ』  『ランキング上位の人が何らかの委員会に選ばれるってことか』  『その認識で問題ないわ』  そんな会話を思い出した。  「では、ご紹介します。まず、会計は抱かれたいランキング3位です」  「「「きゃぁぁぁぁ」」」  いや、この歓声には慣れねぇわ。  「はぁ〜い。会計に選ばれましたぁ、一年の金井類(かねいるい)でぇす」  一言で言うなら、チャラ男である。それはちゃんと王道なんだな。  金髪にピアス、伸ばした語尾。まさに王道学園のチャラ男だ。  …うん。  「生理的に苦手なタイプだ」  「そんなストレートに言うなよ」  流はこの人には関わらんとこ、と決意した。  「次は書記です。抱きたいランキング4位、抱かれたいランキング5位です」  「「「きゃぁぁぁぁ!!!」」」  いちいち叫ばないと気が済まないのか、チワワたちよ。  「し…ら…か…わ……っです」  「ん?何て言った???」  「さぁ?」  「書記の白河誠(しらかわまこと)さんです。一年生です。喋るのが苦手だそうです」  琥珀が代わりに通訳した。  「喋るのが苦手なのか…。これも王道展開か」  「お、王道?なんだそれ?」  「いや、こっちの話」  会長だけが王道じゃないみたいだな。あの人とは仲良くなれそうな気がする。(ま、目立ちたくないから関わらないけども)  「最後は庶務です。抱かれたいランキング6位です」  「「「きゃぁぁぁぁ!!!」」」  もう、鼓膜が破れそうだよ。  「…庶務に選ばれた一年の永守雪(ナガモリユキ)っす…」  だるそうな声を出す雪。見た目がもう不良だった。目立つ赤色の髪に制服なんかネクタイを締めていない。  見た目が生徒会っぽくなくても、ランキング上位だったらそれさえも許されるのか。  改めて王道学園というのは、頭がおかしいらしい。普通の学校だったら立候補すらできねぇわ。  「これがこの学園の普通なんだよな」と栄一が、ぐったりしている流に言う。    「ちなみに俺は抱かれたいランキング8位だった」  ピースサインを見せてくる栄一。お前のその容姿ならそりゃ上位に選ばれるわ。でもな、普通の感覚だとそんなランキング嬉しくも名誉でもないんだわ。  「お前はそれでいいのか」  「ん?何が?」  「そのランキング、嬉しいか?」  「俺はノンケだけど、男から見てもかっこいいっていうランキングみたいなもんだろ?普通に嬉しくね?」  「そういうことね。ってかお前、ノンケなのかよ」  「中等部からいるけど、俺はノンケだよ」  「オレにも欲しいわ、お前のその強靭なメンタル…」
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