1.事実は小説より奇なり

11/16
前へ
/21ページ
次へ
 ー20分後ー  「はい。無事分かれたみたいですね。では、5分後にスタートします。  先に泥棒役が逃げます。その1分後に警察がスタートします。  制限時間は2時間です。  それでは、頑張ってくださいね」  修練された笑顔でそう言い、琥珀は舞台裏に消えた。  「なぁ、鏑木」  「なんだ」  「…一緒に逃げないか?」  「嫌だよ」  「ひどくねぇ?」  「お前目立つじゃん」  チラチラと栄一を見るチワワたち。巻き込まれるなんてごめんだね。逃げ切りたいんだよ。  「健闘を祈る」  「冷たいな」  そして、5分後。  『では、スタート!!』  泥棒役の生徒たちが一気に逃げ出す。  「じゃ、2時間後に!」  「ちょ、待て!」  流はいい笑顔で栄一を置いていった。  「鏑木の薄情者ーーーー!!!」  後ろで栄一の悲鳴が聞こえたが、聞こえないフリをした。  だって、巻き込まれたくないもん。  『警察役がスタートしました!!』  お、警察役がスタートしたか。  「さぁて、どこに逃げようかな」  周りを見ると血眼でターゲットを探すチワワたち。怖いなぁ。  あ、遠くから誰かの悲鳴が聞こえる。頑張って逃げてるんだなぁ。  流はのんびりと歩く。他の人は一所懸命逃げたり、追いかけたりしているというのに、流は何者にも流されることなく、ただそこに存在している。  「そういえば、豪華な景品って何だろうな」  どうせやるなら、逃げ切りたい。  そう思った流はあるものを取り出したーーーー。  
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加