1.事実は小説より奇なり

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 ー20分後ー  「はい。無事分かれたみたいですね。では、5分後にスタートします。  先に泥棒役が逃げます。その1分後に警察がスタートします。  制限時間は2時間です。  それでは、頑張ってくださいね」  修練された笑顔でそう言い、琥珀は舞台裏に消えた。  「なぁ、鏑木」  「なんだ」  「…一緒に逃げないか?」  「嫌だよ」  「ひどくねぇ?」  「お前目立つじゃん」  チラチラと栄一を見るチワワたち。巻き込まれるなんてごめんだね。逃げ切りたいんだよ。  「健闘を祈る」  「冷たいな」  そして、5分後。  『では、スタート!!』  泥棒役の生徒たちが一気に逃げ出す。  「じゃ、2時間後に!」  「ちょ、待て!」  流はいい笑顔で栄一を置いていった。  「鏑木の薄情者ーーーー!!!」  後ろで栄一の悲鳴が聞こえたが、聞こえないフリをした。  だって、巻き込まれたくないもん。  『警察役がスタートしました!!』  お、警察役がスタートしたか。  「さぁて、どこに逃げようかな」  周りを見ると血眼でターゲットを探すチワワたち。怖いなぁ。  あ、遠くから誰かの悲鳴が聞こえる。頑張って逃げてるんだなぁ。  流はのんびりと歩く。他の人は一所懸命逃げたり、追いかけたりしているというのに、流は何者にも流されることなく、ただそこに存在している。  「そういえば、豪華な景品って何だろうな」  どうせやるなら、逃げ切りたい。  そう思った流はあるものを取り出したーーーー。  
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