1.事実は小説より奇なり

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 「はい、皆さんお疲れ様でした」  琥珀の凛々しい声で皆の視線が舞台に集中する。  「それぞれペアになった方がいらっしゃると思います。景品などはのちにメールなどでご連絡させていただきます。  そして、唯一逃げ切った生徒がいます」  オレです。  「その生徒には豪華な景品がある、と言いましたが急遽変更しました」  え?豪華な景品は?  「風紀委員長からプレゼントがあるとのことです」  現れたのは、雲雀さん(仮)だった。  「風紀委員長の澤村雄大(サワムラユウダイ)だ。  今年の新入生歓迎会はいつもよりも被害が少なかった。なぜ少なかったかと言うと、ある生徒が阻止していたことが分かった」  あ、雲雀さんじゃなかったのか。名前。そりゃそうか。  被害が少なかったんですね。よかったですね。  「ご存知の通り、毎年風紀委員会は人手が足りない。そこで今年からはスカウト式で委員を集めることにした。  被害を最低限に抑えたその生徒をスカウトしたい。そして、このスカウトを拒否することはできない。なぜなら俺の言うことは絶対だからだ。  俺がスカウトするのはーーー」  バチッと目が合った。流は冷や汗をかいた。  雄大はニヤリと笑い、指を指した。  「この新入生歓迎会を逃げ切った唯一の生徒。それは外部生であり、特待生の鏑木流だ」  「へっ?」  「俺はお前を風紀委員会にスカウトする。これが俺からのプレゼントだ。拒否権はない。放課後風紀委員会室に来い」  「」  「そのふざけた仮面を付けて来たら……わかってるよな?」  鬼がいました。  「アイアイサー!!!」  綺麗な敬礼が決まりました。  正義感で人を助けたら、風紀委員にスカウトされました。拒否権を与えられることなく、オレはそのまま風紀委員になりましたとさ。  「どうしてこうなった」  〈兄弟のLINE〉  『弟よ、新入歓迎会どうだった?』  『事実は小説よりも奇なり』  『え、え?何があったん!?』  『察しろ、バカ兄貴』  
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