2.芸術は爆発だ

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 衝撃のスカウトから一年ーーー。  「もうオレも2年生かー」  目の前にある大量の書類から現実逃避するように、一年前のことを思い出していた。    スカウトされて、どうなるかなと思ったけどこれといった大問題が起こることなく、まぁまぁ平和に過ごしていた。  しかし、それは嵐の前の静けさに過ぎなかったのだ。  2年生になってすぐにそれはやってきた。中途半端な時期にやってきた転校生。その転校生がヤバかった。    咲夜が「王道転校生ktkr!!!」って喜んでいたなぁ。    何がヤバいかって言うと、まず見た目がヤバい。皆さん、ご存知のように、この学園は顔面偏差値が高い。容姿が重視される学園なのだから、少しでも容姿がよくないと周りからいじめられやすい。そんな環境なのである。  常々、風紀委員会から「いじめはしないように」と注意はしているのだが、それでもなくならない。  やってきた転校生はモジャモジャ頭にぐるぐるメガネをつけていた。まぁ、アカリ曰く変装、だそうだがこの見た目じゃ、生徒たちに嫌われるだろう。  次に、言動。  生の王道転校生を見たいがために、朝から正門にやってきて盗撮していた咲夜からの情報。  3mはある正門の塀を余裕に登り、そこから飛び降りたという。怪我一つなかったらしい。それも王道転校生だからできることだ、と興奮気味に咲夜が言っていた。  さらに、驚くべきことに転校して初日に問題を起こしたのだ。案内係の琥珀に対して、「作り笑いなんかやめろよ!」と爆弾発言し、それにより琥珀に気に入られ、キスされたという。そして、琥珀を殴って気絶させた。  …完全な問題児である。ちなみに、咲夜から『副会長気絶したww助けてww』という喧しいLINEが来ていたので、現場に向かった。気絶した琥珀を流が運んだのだ。その様子をずっと撮影していた咲夜は後で殴った。  王道転校生はなんと、流たちと同じクラス2-Sクラスだったのだ。  その後の展開は予想できるだろう。チワワたちの非難の声がすごかった。でもメンタルが鋼なのか、一ミリも気にしない転校生。すげぇよな。  2-Sクラス一の爽やかなイケメンである、風早将吾の隣の席に座った転校生は早速、風早を落とした。  絶対制裁対象にされるだろう。流は早速、雄太にパトロールの強化した方が良いという旨のLINEを送った。  あ、転校生の名前は鈴鹿薫(スズカカオル)だ。可愛らしい名前ではあるが、名前と容姿が伴っていない。  それだけじゃない。  流は椅子に深く腰掛けながら、食堂での騒ぎを思い出す。  咲夜から『流ちゃん、ヘルプミー』とラインがあり、流は雄大と一緒に食堂に向かったのだが…  「何だこれは…」  そこは地獄だった。      
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