1.事実は小説より奇なり

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 その後、どうなったかって?  いや、なんもなかったよ。  実に平和だった。ただ、ある一点だけ除いて。    「お金持ちの新入生歓迎会っていうから、優雅にパーティとかやると思ってたわ」  「それが違うんだよな、ここは」  流と栄一は一年であることを示す緑色のラインが入ったジャージを着てそんな会話を交わす。  そういえば、アカリが言ってた。  『王道学園の新入生歓迎会はケイドロか鬼ごっこだから』  ええ。まさにその通りでした。  「何で高校生にもなってケイドロやらなあかんねん」  思わず関西弁になってしまう。  「お金持ちのお坊ちゃんはケイドロとか鬼ごっこを知らないからなぁ」  呑気に答える栄一。栄一は中等部からこの学園にいるらしく、まぁまぁ学園の常識に染まっていた。  「だとしても、高校生だぞ?」  「確かに」  流は遠い目で生徒会の説明を聞いていた。  大和撫子のような見た目をした男がマイクを持って、静かな声で話し始めた。  「副会長の斑目琥珀と申します。ただいまより、新入生歓迎会を開催します。ルールは簡単です」  ケイドロのルールなんか知ってるから、聞き流しておく。  「あ、忘れてました」  琥珀がウッカリとしたような表情でこんなことを言い出した。  「新しい生徒会のメンバーが決まりましたので、この場所をお借りして発表させていただきます」  「新しいメンバー?」    隣を見ると「あぁ。もうそんな時期か」と栄一はこの話の趣旨が分かっているようだった。  「え、どういうこと??」  「アカリさん、だっけ?アカリさんから聞いてねぇの?生徒会メンバーの決め方」  そう言われ、大して思い出したくもないアカリとの会話を懸命に思い出す。  『いい?流くん』  『はぁ…』  『ちゃんとメモ取りなさいよ!大智くん!カモン!』  『はい!』  どこからかホワイトボードを持ってきた大智に呆れる。  『王道学園の生徒会メンバーはね、特殊な方法で選ばれるのよ』  『生徒会』  『抱きたいランキング、抱かれたいランキング上位の人が選ばれるのよ』  『あ、ちょっと待ってください』  信じられないパワーワードを耳にし、手を挙げた。  『何よ』
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