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 そのような存在に、高梨は一つしか心当たりがなかった。  ――高梨さんは、ナマケモノを飼ったことはありますか。 「もしかして君は……変温動物ですか」 「……外温性の、ヒト、って言って、ください」  拗ねたように、耳元で類が呟く。  以前何かの記事で読んだ奇跡の存在が、自分の上で息をしている――。重なる鼓動にそう実感した時、高梨は無意識に類の(うなじ)を撫でていた。  少しずつ、類の肌に自分の熱が移っていく。環境温度に体温を左右される、外温性のヒトの特徴だ。それは高梨が、今、類を生かす環境の一部となっていることを意味していた。 (あの記事の憶測も、この子を目にしたら信じられるな……)  御堂類、二十歳。息を呑むほど美しい、ほころび始めた蕾のような少年――都市伝説のような生き物との付き合いは、こうしてパンツ一丁の裸の触れ合いから始まった。
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