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(1)
この世に外温性の人類の存在が確認されてから、もう随分経つ。
外温性の人類――つまり、人型の変温動物だ。近似の生物を挙げるとすれば、ナマケモノがそれにあたる。哺乳類だが、体内で熱を作ることができず、正常な活動に必要な体温を外の熱源に頼って生きている。
必要がない時は外気温と同程度の体温でいるため、エネルギー消費はかなり少ない。つまり代謝が少ないため、食事も普通の人間の三分の一程度で済む。省エネルギーを生存戦略として進化した、希少種のヒトだ。
その特徴が強く出た御堂類は、上は姉ばかりの本家の長男ということもあり、一族の中でも末っ子扱いで育てられた。ただし本家の長男という立場は、通常のそれとは異なる。御堂家は代々娘が婿を取って家を継ぐ、完全な女系一族だからだ。
上に三人も姉がいる類が、家の将来を担う可能性は――たとえ姉全員が突然不幸に見舞われることがあったとしても――ゼロだった。勿論姉たちには健康で長生きしてほしいし、本家の当主になりたいわけでもない。
ただ、自由に外の空気を吸ってみたい。一度きりの人生を、自分の手で切り拓いて生きていきたい。
(お祖母様の言いなりになるなんて、ごめんだ)
自立の道を模索して、耳から煙が出るほど考えた末の結論を試す日が、ようやく訪れた。おそらく――いや確実に、最初で最後のチャンスだ。
この日のために、万全の準備と下調べをしたつもりだ。これから会う試験官には、何としても合格点をもらわなければならない。輝かしい、運命という軛から解き放たれた未来のために。
決意も新たに、類はその白く柔らかな手をきゅっと握り締めた。
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