cat nap(3)

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cat nap(3)

  三 「どうする、風花。続きを読む?」  大悟にそう促され、考え込んでしまう。わざわざUSBにメッセージを残したのは、私しか頼れる人がいないからなのではないだろうか。 「読むことにする」  私は決心して、そう答えた。 「俺も読んでいいか?」 「うん。一緒にいて欲しい」  内容によってはきっと一人では受け止められないだろう。000のデータを開くと、そこにはアドレスが貼られていた。 「どこのアドレスかな?」 「これ、ブログのアドレスだと思う」 「ブログって、芸能人がやってるやつ?」 「一般の人もやってるよ。SNSより確実に情報が伝わるから、まだ利用者も多いんだ。見てみる?」  大悟が検索サイトを開き、アドレスをコピーする。それを貼り付けるとシンプルなデザインのブログが現れた。『毒親持ちが苦痛を吐き出すだけのブログ』というタイトルが、目を引く。見出しをクリックすれば記事を読める仕組みのようだ。 「毒親って?」  あまり聞いたことのない単語だった。 「……覚えてないのか? 今問題になってる、子離れできない親のこと。肉体的、精神的に虐待することで、子どもを自分の手元に置いておこうとするんだ」 「そうだったっけ?」 「香織さんもそうだったのか?」 「聞いたことない」  寝耳に水、とはまさにこの状態をいうのだろう。私は香織の家族の問題なんて聞いたことがなかったし、ブログを書いていたことも知らない。 「やっぱり、見ないほうがいいかもしれない」 「なんで? 香織は私にメッセージを託したんだよ」 「風花の知らない香織さんがこの中にいるんだ」  半ばやけになって、大悟からマウスを奪う。一番上の見出しをクリックすると長い文章が現れた。 「もし事件に関係することだったら、警察に行かないといけないし」 「……わかった。最後に更新されたのは十月の半ば頃か。それからは書いてないみたいだ」 「十月×日『家事全てを担う』    今日も毒母はイライラしている。料理を教えてくれたことなど一度もないのに、私が作った味噌汁をまずいと言って捨てた。ご飯は食べてるようだ。炊飯器が作ってる認定? おかずはレトルトだからセーフらしい。  洗濯した服を干していたら、ハンガーの使い方が悪いと怒鳴られた。掃除機をかけていたら、今度はうるさいとソファーを蹴っていた。パチンコで負けたから、お金をよこせと言う。今月はもう五万円になる。  いっそのこと、私に手をあげてくれたらいいのに。証拠動画を撮って警察に行ける。私がスマホを持ってから、絶対に手をあげなくなった。悔しい。  明日も残業だし、家事はもう疲れた。お風呂掃除もしなきゃだし、仕事の後だと体力が持たない。やっぱり結婚して家を出ようか。毒母と顔を合わせずに済むだけでも心が軽くなるかな?」
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