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送辞
「寒さも和らぎ、吹く風にも春の息吹を感じられる季節となりました。
三年生の頭の成長してない木偶の坊の皆様、ご卒業おめでとうございます。在校生一同、心よりお祝い申し上げます。
皆様は覚えていますか。
入学当初、僕達は不安と期待に満ち溢れこの青春学園の門をくぐりました。
そんな僕達を木偶の坊達は優しさゼロで導いていてくれた事を。
その先には──巨大迷路があった事を。
その中に放り込み、新入生同士でバトルロワイヤルをさせた春のことを。
未だに山田は巨大迷路から帰還しておりません。
僕達は身を持って一寸先は闇。
信じれば裏切られる。
信じるのは己のみ。
そんな弱肉強食の精神を巨大迷路から学び、先輩達のように狡猾に生き抜く事も人生に必要だと思い知らされました。
そして夏の水泳訓練。
先輩達がプールに放ったホオジロザメ。
恐怖とは命の炎を燃やす事。
そしてそれは紛れもない生への渇望。
僕達は生きるという事を。
この一瞬はかけがえのない生の証だと。
ホオジロザメから学びました。
生きて先輩達にこの研ぎ澄まされた純粋な殺意を見て貰えるように僕達は必死でプールの中を泳ぎ散らかしました。
そして──肉の壁となってプールの藻屑になった田村の笑顔。
僕達はそれを一生忘れません。
悲しみも癒えないままに季節は移ろい、秋を迎えました。
ここでも先輩達が仕掛けた文化祭。
僕達は既に揺るぎない信念、生への執着を身に着けていました。
先輩達が工夫をこらした文化祭にハマったフリをしつつ、僕達が用意したトラップ。
──予め決まっていた偽装死体に驚く先輩達を見ていて積年のうらみを晴らすときが来たと大変心が踊りました。
しかし、外部から来た純粋に文化祭を楽しみ来た来客が偽装死体に慄き、まさしく警察に通報される寸前に来客を一瞬で気絶させる絶技は業腹ですが、尊敬に値するものでした。
そのまま妙なテンションで肩を並べて笑いあった
文化祭は僕達もしっかりと、後輩に伝え、青春学園の伝統を守って行きたいと思います。
そんな先輩達と過ごした日々はどれも民事訴訟への大事な思い出です。
そして冬。
先輩達との合同「雪上冬季戦技教育実習」は、一年の集大成ともいえる命のやり取りでした。
雪原にばら撒かれた地雷原を一年生に先行させ、陣地の確保。
遊撃部隊隊員による狙撃と強襲。
田村が残した屈強な精神を僕達は受け継ぎ、技能のさらなる修得を目指し、積雪寒冷地における任務遂行能力を向上させました。
これも全て先輩達の日々の冷徹なご指導ご鞭撻の賜物です。
そんな僕達は先輩達から極限状態に置ける命の尊さを学びました。
本当にありがとうございます。
覚えてろ。
先輩達はこれから、社会と言う大海に出発します。
それは艱難辛苦で、前途多難、四苦八苦、七難八苦、しくしくと泣き続けるようにと願わずにはいられません。
そんな背中を見ながら僕は高笑いを上げて自分の夢を必ず成就します。
何よりも先輩が入学当初より僕を謀殺しようとした事、一生忘れません。
憎き紫城 薫子は今後、眠れない夜を抱いて、震えて命乞いをして欲しいと思っています。
次のステージ。
高等裁判所の法廷で決着をつけましょう。
最後になりましたが、我が学年の健康と益々の活躍を心からお祈りし、送辞とさせていただきます。
卒業おめでとうございます。
ニ年代表 我修院 霧矢」
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