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「ボク、聞いたんだ。この人が死にたい、死にたいって。言ってたから。」
田淵くんは涙を流しながら事の顛末を語り始めた。
田淵くんが言うには、この女は「死にたい」と嘆きながら路地裏を一人で歩いていたらしい。
(そうだ!この間はいけないことをしてしまったから、今度は人助けをしよう!)
心優しい田淵くんは女に話しかけた。
『よかったら、殺しましょうか!』
女は目を丸くしたが、すぐにおかしくなって吹き出した。
『はは、それじゃあボクにお願いしようかなー』
田淵くん、喜んですぐさまポケットにあったナイフを取り出した。
女はギョッとしたが、思考が追いつかない。その場に棒立ちになってしまった。
田淵くんは女のお腹めがけて思いっきりナイフを突き刺す。
『あ、あぁ…!』
勢いよく刃を抜いた傷口からはジワジワと血が滲み出てきた。
これで死ぬだろう、と得意げな顔で仁王立ちする田淵くん。
しかし女はこの期に及んでこんなことを口走るではないか。
『嫌だ、死にたくない…誰か、助けて…!』
今にも消えてしまいそうな小さな小さな声だったが、田淵くんはそれを聞き逃さなかった。
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