②女子高生

3/8
前へ
/23ページ
次へ
「ボク、聞いたんだ。この人が死にたい、死にたいって。言ってたから。」 田淵くんは涙を流しながら事の顛末を語り始めた。 田淵くんが言うには、この女は「死にたい」と嘆きながら路地裏を一人で歩いていたらしい。 (そうだ!この間はいけないことをしてしまったから、今度は人助けをしよう!) 心優しい田淵くんは女に話しかけた。 『よかったら、殺しましょうか!』 女は目を丸くしたが、すぐにおかしくなって吹き出した。 『はは、それじゃあボクにお願いしようかなー』 田淵くん、喜んですぐさまポケットにあったナイフを取り出した。 女はギョッとしたが、思考が追いつかない。その場に棒立ちになってしまった。 田淵くんは女のお腹めがけて思いっきりナイフを突き刺す。 『あ、あぁ…!』 勢いよく刃を抜いた傷口からはジワジワと血が滲み出てきた。 これで死ぬだろう、と得意げな顔で仁王立ちする田淵くん。 しかし女はこの期に及んでこんなことを口走るではないか。 『嫌だ、死にたくない…誰か、助けて…!』 今にも消えてしまいそうな小さな小さな声だったが、田淵くんはそれを聞き逃さなかった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加