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「シゲアキさん、これ、いつものいける?」
長嶋くんは猫の死骸を指さした。
「くふ、今日は、こ、これですか?これなら、私ひとりで十分ですよ。」
シゲアキは大きな袋を取り出し、手際よく肉片をその中へ放り込んだ。
「ねぇ長嶋くん。あれはどうやって元通りにするの?」
「田淵くんには秘密だけど、とっておきの魔法だよ。」
「あ!からかってるなぁ。」
朗らかに話す田淵くんの顔は、すっかり笑顔になっていた。
シゲアキは、乗ってきた車に猫を入れた袋を積み込み、さっさとどこかへ消えてしまった。
「ねぇ田淵くん。」
長嶋くんは田淵くんの目をじっと見つめる。
「田淵くんは、今日何も悪いことをしてない。だから先生にも怒られない、大丈夫だよ。あとは何も考えずにいつも通り帰るだけ。」
「でも。」
「大丈夫。もう今頃あの猫は、この街を元気に歩いてるよ。だから、ね?」
温かい長嶋くんの微笑みに、思わず田淵くんも頬を弛めてしまう。
「わかったよ、ありがとねぇ、長嶋くん。」
そう言い残すと、田淵くんは元気にどこかへ走って行った。
「いいなぁ、彼──」
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