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前日から降り続いた雪が、人里離れた山奥の一軒の山荘を包み込んでいた。
豪華なディナーを終えた酒の飲めない世界的名探偵の保成(ポナロ)氏は、暇を持て余してテレビを見ていた。それを見かねたこの館の執事が、保成氏の横に座り、話し相手になった。
その翌日の朝、二階で一人の男が死んでいるのが見つかった。
登場人物
数々の難事件を解決してきた世界的名探偵 保成(ポナロ)(五六)
大会社の会長 直上 盆太 (七六)
大会社の社長で盆太の息子 直上 盆凡 (四七)
盆太の甥 直上 将一 (四三)
真面目な執事 山田 (六四)
働き者の家政婦 鈴木 (四一)
発見されたのは、この館のあるじの野上盆太で、胸にナイフが突き刺さった状態でベッドに横たわっていた。
発見したのは、いつもの時間に起きてこない主人を呼びに行った執事の山田だった。
取り乱して一階の居間に飛び込んできた執事の話を聞き、保成氏はそこにいた盆太の息子の盆凡と一緒に殺人のあった部屋に行った。
二階にある広い部屋の大きなベッドの上で、盆太は仰向けになっていた。胸に突き立てられたナイフの柄が天を指している。
「警察に連絡をしてください。殺人があったと」
保成氏は後からぞろぞろと付いてきたうちの一人の執事に向かって言った。
「はい」
執事は階下へと降りていった。
「これから死体の状況と部屋の中をざっと調べさせていただきます。盆凡さんは一緒に来て見ていてください。部屋の中の物には手を触れずに。他の方たちは部屋に入らないでください」
そう言って保成氏は死体の状態を細かく観察したり、匂いを嗅いだり、スマホで写真を撮ったりした。
その後、部屋の中を注意深く見て回った。保成氏も死体や部屋の中の物には一切触れようとしなかった。
部屋は高価な調度品で埋め尽くされていた。
その片隅に、何本かの使いかけのローソクや、鞭、縄が置かれていた。
「お父様は幅広い趣味をお持ちでしたようですな」
保成氏が言った。
「はあ」
盆凡は困ったように、あやふやな返事をした。
ひと通り見分を済ませると、保成氏たちは部屋を出て、ドアにカギをかけた。
「警察が来るまで、この部屋はこのままにしておきます。まあ、警察もすぐには来られないかもしれませんが」
窓の外の雪景色を見ながら保成氏が言った。
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