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道の真ん中に、手袋がひとつ落ちている。
女性用の、上品な茶皮の手袋だ。
使い込まれているけれど、目を引くほどには艶がある。
……愛用してんだろな。
ひょい、と指先でつまんで、また歩き出す。
オッケーオッケー。こっから交番、すぐだから。
* * *
「今日はずいぶんと良いことをしたな」
……あれ? パソコンの電源、入ってんの?
仕事を終えて深夜に帰宅した俺。
ふう、とベッドに倒れ込んで目を閉じたら、妙な方から声がした。
テレビはついてないんだし、スマホは尻ポケだし、机のパソコンしかないよな。
くるり。と机の方を向いてみる。
!!!!!
な、なにあれ。
なんか、……ヘンなものがいる。動いてる……生きてる、みたい。
ベッド脇、机の端に腰かけて、足をぷらぷらさせている。
「ナ、ナナ、ナニ? コレ」
謎の物体めがけてベッド上を這い、ひとりごと程度に声を出す。
ヘンなものは俺の声を無視して、そのまま足ぷらを続けた。
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