神さま様

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「ほほう、これはチョコレートというものだな。二月になると日本中を大量に飛び交うではないか。確かに、どす黒い見た目ながらなぜか心惹かれるものがある」  ぱく、と食らいつく。  一口では食べきれないが、やはり人間のアゴよりも弱いから噛み切ることはままならない。  あむあむあむ、とかぶりついたまま舐めている。  うん、思った通り。  みかんの汁も残るお口のまわりが、チョコで程よくベタベタに……。  くーっ、たまらん、と思った瞬間、神さま様が赤い舌をべろりと出して口まわりを舐めた。  …………悶、絶…………  大変良いものを見せてもらい満足した俺は、ガーゼハンカチを湯で濡らしてお持ちする。 「ほら、ベタベタですから、お顔を拭きますよ。僕がやりましょう」 「うむ」  小豆大にぷっくりとした唇の周りを、ガーゼで優しくぬぐう。  されるがままの麗しき顔の碧眼が、長い睫毛を伏せながら下を向く。  ぐ、ぐはぁーーーーー。  細く白く、でも爪の先だけがほんのり桜色をした指先も、チョコという泥でべたべたに汚されている。これはいけない。  一本一本丁寧に、ガーゼの先で軽くしごく。  心なしか頬を染めた神さま様が、 「このくらいは平気じゃ」  そう言いながら唇からチロリと舌を伸ばし、最後の小指の汚れをぺろん、と舐め取った。  ぐ、ぐ、ぐはははぁーーーーーー。  何らかのものと理性を闘わせながら、俺はハンカチをゆすぎに行った。
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