7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほほう、これはチョコレートというものだな。二月になると日本中を大量に飛び交うではないか。確かに、どす黒い見た目ながらなぜか心惹かれるものがある」
ぱく、と食らいつく。
一口では食べきれないが、やはり人間のアゴよりも弱いから噛み切ることはままならない。
あむあむあむ、とかぶりついたまま舐めている。
うん、思った通り。
みかんの汁も残るお口のまわりが、チョコで程よくベタベタに……。
くーっ、たまらん、と思った瞬間、神さま様が赤い舌をべろりと出して口まわりを舐めた。
…………悶、絶…………
大変良いものを見せてもらい満足した俺は、ガーゼハンカチを湯で濡らしてお持ちする。
「ほら、ベタベタですから、お顔を拭きますよ。僕がやりましょう」
「うむ」
小豆大にぷっくりとした唇の周りを、ガーゼで優しくぬぐう。
されるがままの麗しき顔の碧眼が、長い睫毛を伏せながら下を向く。
ぐ、ぐはぁーーーーー。
細く白く、でも爪の先だけがほんのり桜色をした指先も、チョコという泥でべたべたに汚されている。これはいけない。
一本一本丁寧に、ガーゼの先で軽くしごく。
心なしか頬を染めた神さま様が、
「このくらいは平気じゃ」
そう言いながら唇からチロリと舌を伸ばし、最後の小指の汚れをぺろん、と舐め取った。
ぐ、ぐ、ぐはははぁーーーーーー。
何らかのものと理性を闘わせながら、俺はハンカチをゆすぎに行った。
最初のコメントを投稿しよう!