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カネの種を十個ほど食べた神さま様は、満足そうに手の甲で口をぬぐい、粉を払った。
「愚かなる迷い子よ。そなたの供物、確かに受け取ったぞ」
今更ながら、重々しく言い置いて立ち上がる。
来た時のように机の上で仁王立ちになり、腰に手を当て、おごそかな口調で告げた。
「それでは、達者でな。愚かなる迷い子よ、ワレより天罰を受けぬよう努めよ。天罰の折には、かように好もしい姿にはなってはやらぬぞ。そしてこれからもますます善行に励むのだ。……であればまあ、また供物を受けに来てやらんでもない」
そうして、しゅるるるん、と素早くひと飛びすると、そのままふっと消えてしまった。
* * *
放心状態のまま一分ほどを過ごした俺は、部屋の中をゆっくりと見渡した。
あっれー。夢、だった、かな。
窓を開けて、外を眺める。テレビをつける。
……どうやら新ワールドにいるわけでも、なさそうだ、けど。
机の上に目を遣る。小皿の中に、端だけ溶けたチョコレートのかけら。
そして、ポリンと先っちょだけ欠いたらしいピーナッツ。
どーも、現実だった、気がするなあ。
時計に目を遣る。確か11時半頃戻ったのに、既に日付を越えている。
いい感じの時間経過だ。
やっぱ、現実だった、気がするなあ。
ふう、と、俺は初めて神さま様の声を聞いた時のように、ベッドに寝転がった。
そして、思う。
俺ってばさ、本当は全然、善人なんかじゃないんだよ。
神さま様もわかってて、あえて触れなかったよね。
実際のところ、告発されたって言われて思い至ることはある。
結構たくさん、ある。
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