32人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「ただいま……」
拓はふてくされて自分の部屋に上がった。
淳一は同じ近所に住んでいた十歳年上の幼なじみだ。拓が小学校に入った頃からのつき合いで、初恋の相手。
年齢が一桁だった頃は憧れ、中学に上がる頃に恋に落ち告白して、高校に入ってやっと「彼氏」の立場に昇格させてもらった。
それでも、一緒に遊んでもらえて一番に構ってもらえていた頃が愛しい。拓は一人っ子だし、実家を出て一人暮らしをする彼がいない今はただ退屈だ。
ベッドに腰を下ろし、紙袋の中身を広げる。十六歳おめでとうのプレゼントに淳一が買ってくれたシャツとパンツのセットアップは、今の自分のどの服より似合う気がした。アパレルショップ販売員の感性は嘘じゃない。
次のデートはこれを着て行こうと決めた。
そうすれば今度こそは……ディープキスとどまりじゃない、もっと大人な関係に進展してくれるだろうか。
服や下着を贈るのは脱がせたいからだという、どこかで聞いた心理をこっちから植えつけようとしても、淳一は煽られてくれない。何度ねだっても、それっぽく誘っても、答えはいつも同じ。高校を出るまではダメだ、と。
やっと十六歳。でも、まだ十六歳だ。
スマートフォンが震える。
見ると、淳一からのメッセージだった。
最初のコメントを投稿しよう!