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制作過程でアダルウォルフは注文を付けた。
熱中出来る事がそれしか無かった。
始めに完成したものが最も出来が良いのは皮肉だった。
順を追って要求が厳しくなっているというのに。
注文を付ければ付ける程、絵画のルーエの姿と掛け離れていく。
内にあるルーエの姿に不純物が混じり、記憶に自信が持てなくなる。
だから益々彫像制作に情熱が向かう。
年経るごとに絵画や石膏像を前にして、本当にこのような姿をしていただろうかと、記憶を修正していくのだろう。
夜は窓の側に佇み、空を眺める。
瞳には闇夜に浮かぶ月しか映らない。
今宵の月は丸くブロンズ色をしているのに、ルーエと結ばれた晩の欠けた青い月を重ねていた。
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