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裸体の立像がアダルウォルフに微笑む。
陰影が、より立体的な表情を生み出す。
アダルウォルフは立像に口付け抱き締めた。
ベルクフォルムの闇の中で、全身で感じたルーエの温もり。
夢中だった。
情熱から冷静に移ろうとする時に刻まれた記憶。
ルーエ自身が発火していた。
いや、違う。
ルーエが熱を出せる訳が無い。
やはりルーエが溶けてしまったのは、自分のせいだ。
罪を背負うも背負わせるのも辛い。
でも背負う方が少しだけ楽だった。
救いを求める心が記憶を歪めた。
───
空には常に薄く雲が掛かり、靄々する天気が続いた。
雨も増えた。
細雨に大雨、横殴りに降る時もあった。
雪解けを促し、根雪も溶けていく。
花を育てる恵みの水でもあった。
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