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暫くして王宮一帯からベルクフォルムの森に向かって流れる川が生まれた。
人々は川に名前を付けた。
「アダルウォルフの涙」と。
暖かい風が春の到来を教えてくれた。
根雪が溶けて若葉が芽吹いた。
赤い花、黄色い花、ピンクの花が開いた。
雪の下に隠れていた緑草が爽やかな風に波打つ。
草花は雪に守られていたのだと、春を迎えた途端に人々は実感した。
温かくなると冬の厳しさを忘れ、陽射しが強くなると秋の涼風を待ち望む。
秋が過ぎて冬来たれば、また春の夢を見る。
厳しい冬を知らなければ、春の暖かさを知る事も無い。
アダルウォルフの髪は退色して、プラチナブロンドに変わっていた。
熱を生成する能力は消えた。
もう指の先に炎を灯す事も無い。
そんな彼を人々は「炎の王」ではなく、「嘆きの王」と称するようになっていた。
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