63人が本棚に入れています
本棚に追加
「これからベルクフォルムの森に向かう」
将軍達を睨め付けてから低く指示を発する。
斜め下に振られた鞭が空を鳴らした。
「Ja!!」
異論も疑問も無い。
彼等は王の復活を渇望していた。
一糸乱れぬ愛という名の服従。
黒革の鞭の音に痺れ、居並ぶ将軍達の頬は薔薇色に染まっていた。
震える唇を噛み締め、込み上げる興奮を堪える。
アダルウォルフは外に出た。
彼を迎える風で髪が靡き、シルクのブラウスが膨らむ。
肌で感じる春。
二度と訪れないと思っていた春が目の前に広がっていた。
「馬を! 」
本来なら既に馬が用意されている筈なのに、アダルウォルフの命に対して現れたのは四頭立ての馬車だった。
外観は黒を基調とした革張りで重厚感があった。
扉には神話を描いた絵画と国章の三鈷が嵌め込まれ、四つの車輪は輪軸も含めて全て黄金で塗装されている。
屋根の上で微笑む三体の智天使も、馬車の四隅の柱のアフロディーテも彫金で、御者席は深紅のベルベット張りだ。
最初のコメントを投稿しよう!