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「何だ!この大袈裟過ぎる馬車は!俺は馬を用意しろと言った筈だ」
美しい眉を吊り上げ、黒革の鞭を首謀者の顎に突き付ける。
「アダルウォルフ様、出過ぎた真似とは存じますが外出は久しぶりの事。馬での移動はお身体に些かご負担かと──」
嫌がらせと甘やかしの境界は曖昧で、ティオポルドの求める褒美と罰は常に紙一重だった。
「ティオポルドーー何時まで俺を姫のように扱うつもりだ! 」
「私はアダルウォルフ様が心配なのです。どうしても馬車に乗りたくないと仰せでしたら、この私の背にお乗りください」
ティオポルドが両手両膝を付いて四つん這いになった。
異常な服従と過剰な忠誠で、アダルウォルフの怒りに油を注ぐのは何時もの事だ。
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