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同じ森でも、こうも趣が変わるものか。
外に関心が向かなかったアダルウォルフの内では、森はずっと寂しげな白い顔の儘だったのだ。
雪は殆ど消えていた。
胸を針が刺す。
変化は彼にとって未だ残酷だった。
宮殿までの広い道は馬車で、その先の細い道は徒歩で進む。
川は細く途切れそうでいながら先まで続いている。
光が降り注ぐリンデンバウムは神々しかった。
この大樹に向き合うのも幹に触れるのも、身を切られるような痛みを伴う。
それでも愛しい。
愛しくて切ない。
思い出に拐われてしまいたい。
今回の彼の行動を、哀しみと決別する為と将軍達は捉えていた。
だが、そうでは無い。
一歩一歩、大樹に迫るアダルウォルフはスノードロップの薫りに手繰り寄せられていた。
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