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指先が幹に触れた。
ルーエが飛び出してきたウロを見て顔が歪む。
陽光を仰ぎ、唇を噛み締めて下を向いた。
涙で滲む瞳に白い小さな何かが映った。
大樹から少し離れた地面で鈴のように揺れているのはスノードロップだった。
「ルーエ……」
堪えきれず涙が溢れる。
ルーエが溶けて形を残した、まさにその場所に咲いていた。
涙の滴が一粒白い花の上に落ちた。
途端に虹色の光が放射状に伸びて、アダルウォルフは尻餅を付いた。
スノードロップが放つ光が辺り一面を虹色に変える。
「アダルウォルフ様! 」
自分を呼ぶ声は遠く、目を開けているのかいないのか。
視界が真っ白で何も見えない。
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